Next.jsとNuxt.jsにおけるハイドレーションの理解
Daniel Hayes
Full-Stack Engineer · Leapcell

フロントエンド開発の絶えず進化する状況において、サーバーサイドレンダリング(SSR)は、パフォーマンスが高くSEOに優しいWebアプリケーションを構築するための礎として登場しました。Next.jsやNuxt.jsのようなフレームワークはこのアプローチを普及させ、開発者がクライアントに送信する前にサーバー上でアプリケーションをレンダリングする効率的な方法を提供しています。SSRは高速な初回ページロードと優れた検索エンジンインデックスを提供しますが、魔法はそれだけではありません。静的なHTMLがブラウザに到着すると、「ハイドレーション」と呼ばれる重要なプロセスが開始されます。この一見単純なステップは、アプリケーションがクライアントサイドで真に生き生きとし、インタラクティビティと動的な動作を可能にする場所です。しかし、深い理解なしには、ハイドレーションはフラッシュ、パフォーマンスのボトルネック、そして最適ではないユーザーエクスペリエンスの源となり得ます。この記事は、Next.jsとNuxt.jsにおけるハイドレーションを解明し、その内部構造、一般的な問題、そして実践的な解決策を探求し、より堅牢で効率的なWebアプリケーションを構築できるようにすることを目指します。
ハイドレーションの理解のためのコアコンセプト
ハイドレーションの複雑な部分に入る前に、その操作の基盤となるいくつかの基本的な概念を明確にしましょう。これらの用語を理解することは、後続の議論を把握するための確固たる基盤を提供します。
サーバーサイドレンダリング(SSR): これは、ナビゲーションリクエストに応答して、ページの完全なHTMLをサーバーで生成するプロセスです。サーバーはこの完全なHTMLをブラウザに送信し、ブラウザはすぐに表示できます。これにより、高速なFirst Byte Time(TTFB)と知覚されるパフォーマンスが向上します。
クライアントサイドレンダリング(CSR): 対照的に、CSRは、最小限のHTMLファイル(通常はルートdivのみ)とJavaScriptバンドルをブラウザに送信することを含みます。ブラウザはその後、JavaScriptを実行してDOMを動的に構築し、アプリケーションをレンダリングします。
Isomorphic/Universal アプリケーション: これらは、同じコードベースがサーバーとブラウザの両方で実行できるアプリケーションです。これは、同じコンポーネントとロジックが初期サーバーレンダリングと後続のクライアントサイドインタラクティビティに使用されるため、SSRとハイドレーションを可能にする鍵です。
Virtual DOM: 実際のDOMの軽量なインメモリ表現です。React(Next.jsで使用)やVue(Nuxt.jsで使用)のようなフレームワークは、Virtual DOMを使用して、現在のVirtual DOMを新しいものと比較し、必要な変更のみを適用することで、実際のDOMを効率的に更新します。
差分検出(Reconciliation): 新しいVirtual DOMと古いVirtual DOMを比較して、実際のDOMを更新するために必要な最小限の変更セットを決定するプロセスです。
ハイドレーションプロセスの詳細な解説
ハイドレーションは、クライアントサイドJavaScriptアプリケーションがサーバーレンダリングされたHTMLに「アタッチ」するプロセスです。本質的には、サーバーで事前にレンダリングされた静的なHTMLを取得し、クライアントサイドJavaScriptを注入して、インタラクティブにします。美しく描かれた絵(サーバーレンダリングされたHTML)を受け取ったと想像してください。ハイドレーションは、絵のインタラクティブな要素にバッテリーを追加して、クリック可能、スクロール可能、動的にすることです。
Next.jsとNuxt.jsでハイドレーションが通常どのように機能するかをステップバイステップで説明します。
- サーバーが初期HTMLをレンダリング: ユーザーがページをリクエストすると、Next.jsまたはNuxt.jsサーバーはアプリケーションのコンポーネントを実行し、完全なHTML文字列を生成します。このHTMLはブラウザに送信されます。このプロセス中、サーバーは重要なクライアントサイドアプリケーションの状態とプロパティをHTMLに埋め込みます。これはしばしばスクリプトタグ内のJSONオブジェクトとして行われます。
<!-- 初期状態を持つサーバーレンダリングHTMLの例 --> <!DOCTYPE html> <html> <head> <title>My Page</title> </head> <body> <div id="__next"> <h1>Welcome, User!</h1> <button>Click Me</button> </div> <script id="__NEXT_DATA__" type="application/json"> {"props":{"pageProps":{"name":"User"}},"page":"/"} </script> <script src="/_next/static/chunks/main.js" defer></script> </body> </html> - ブラウザがHTMLを受信して表示: ブラウザはこのHTMLを受信し、すぐに解析してレンダリングを開始します。ユーザーは非常に高速に表示可能なページを目にします。なぜなら、初期コンテンツのためにまだJavaScriptを実行する必要がないからです。これがSSRが知覚されるパフォーマンスの点で優れている点です。
- クライアントサイドJavaScriptがロード: 同時に、ブラウザはアプリケーションのクライアントサイドJavaScriptバンドルをダウンロードします。
- アプリケーションがブートストラップして(仮想的に)再レンダリング: JavaScriptがロードされて実行されると、クライアントサイドフレームワーク(Next.jsではReact、Nuxt.jsではVue)が起動します。次に、 サーバー(通常はNext.jsでは
__NEXT_DATA__、Nuxt.jsでは__NUXT__に埋め込まれた)から受信した初期状態を使用して、アプリケーションコンポーネントを再度レンダリングします。ただし、今回はクライアントのVirtual DOMのみを使用します。// 簡略化されたNext.jsクライアントサイドブートストラップ import React from 'react'; import ReactDOM from 'react-dom'; import Page from './pages/index'; // あなたのコンポーネント const initialProps = window.__NEXT_DATA__.props.pageProps; ReactDOM.hydrate( <Page {...initialProps} />, document.getElementById('__next') );// 簡略化されたNuxt.jsクライアントサイドブートストラップ import Vue from 'vue'; import { createApp } from './app'; // あなたのNuxtアプリファクトリ const { app, router, store } = createApp(); if (window.__NUXT__) { store.replaceState(window.__NUXT__.state); } router.onReady(() => { app.$mount('#__nuxt'); // 既存のDOMをハイドレートします }); - 差分検出とイベントリスナーのアタッチ: クライアントサイドフレームワークは、(ステップ4で生成された)新しく生成されたVirtual DOMを、サーバーによってレンダリングされた既存のDOMと比較します。違いがない場合(完璧なハイドレーションの理想的なシナリオ)、フレームワークは単にイベントリスナーとクライアントサイドロジックを既存のDOM要素に「アタッチ」します。違いがある場合、それは差分検出を試み、DOMの一部を置き換えたり更新したりします。このイベントリスナーのアタッチが、ページをインタラクティブにするものです。
一般的なハイドレーションの問題と解決策
ハイドレーションは重要ですが、課題がないわけではありません。誤解や誤設定は、最適ではないユーザーエクスペリエンスにつながる可能性があります。
1. ハイドレーションミスマッチ(チェックサムミスマッチ)
これはおそらく最も一般的で不可解な問題です。ハイドレーションミスマッチとは、サーバーで生成されたHTMLと、クライアントサイドJavaScriptがレンダリングすることを期待するHTMLが異なる場合に発生します。これは、ブラウザコンソールでの警告(ReactのWarning: Expected server HTML to contain a matching <tag> in <parent>.やVueのThe client-side rendered virtual DOM tree is not matching the server-rendered content.など)、またはさらに悪いことに、目に見えるちらつきやUIのシフトとして現れることがよくあります。
原因:
- ブラウザ固有のレンダリング: サーバーのNode.js環境は、ブラウザのDOM API(例:
innerHTMLや自己終了タグの違い)とはわずかに異なるレンダリングを行う可能性があります。 - SSR中のクライアントサイドのみのコード実行:
windowやdocumentのようなブラウザ固有のAPIやlocalStorageに依存するコードは、SSR中に実行され、クライアントでの結果とは異なる出力を生成する可能性があります。 - クライアントサイド状態に基づく条件付きレンダリング: 初期クライアントサイド状態に基づいてコンポーネントが異なるレンダリングを行う場合、サーバーで利用できないか、一貫性がない。
- 誤った
hydrationロジック: ハイドレーションが完了する前に、バニラJavaScriptやサードパーティライブラリを使用してフレームワークの制御外でDOMを直接操作すること。 - 時間依存のレンダリング: 現在時刻に基づいて異なるコンテンツをレンダリングするコンポーネント(例:「おはようございます」対「午後の挨拶」)は、サーバーとクライアントのタイムゾーンまたは正確なレンダリング時刻が異なると、ミスマッチを引き起こす可能性があります。例えば、
new Date().toLocaleString()の出力は異なる場合があります。
解決策:
- サーバーでのブラウザ固有コードの回避:
typeof window !== 'undefined'でクライアント専用コードをゲートします。// Reactコンポーネント内 function MyComponent() { const [isClient, setIsClient] = React.useState(false); React.useEffect(() => { setIsClient(true); }, []); if (!isClient) { return <div>Loading...</div>; // サーバーでプレースホルダーをレンダリング } return ( <div> {/* クライアントサイドのみのコンテンツ */} <p>Window width: {window.innerWidth}</p> </div> ); }<!-- Vueコンポーネント内 --> <template> <div> <p v-if="isClient">Window width: {{ windowWidth }}</p> <div v-else>Loading...</div> </div> </template> <script> export default { data() { return { windowWidth: 0, isClient: false } }, mounted() { this.isClient = true; this.windowWidth = window.innerWidth; } } </script> - Nuxt.jsでの
noSSRまたはNext.jsでのssr: falseでの動的インポートの使用: サーバーレンダリングできない、または一貫してミスマッチを引き起こすコンポーネントは、SSRから除外することを選択できます。<!-- Nuxt.js: <client-only>の使用 --> <template> <div> <client-only placeholder="Loading map..."> <MapComponent /> </client-only> </div> </template>// Next.js: ssr: falseでの動的インポート import dynamic from 'next/dynamic'; const DynamicMapComponent = dynamic(() => import('../components/MapComponent'), { ssr: false, // このコンポーネントはクライアントでのみレンダリングされます loading: () => <p>Map loading...</p>, }); function Page() { return ( <div> <DynamicMapComponent /> </div> ); } - 一貫した状態の確保: サーバーから渡される初期状態、またはクライアントで導出される状態が、同じレンダリング出力を生成するようにします。
- リストの
key属性: リストをレンダリングする際は、差分検出プロセスを支援するために、常に安定したkey属性を使用します。
2. パフォーマンスオーバーヘッド(インタラクティブまでの時間)
SSRは高速な初回コンテンツペイント(FCP)を提供しますが、ハイドレーション自体が、特に大規模で複雑なアプリケーションにとって、重いプロセスになる可能性があります。JavaScriptバンドルが大きい場合、またはコンポーネントツリーが広範な場合、ブラウザがJavaScriptをダウンロード、解析、実行し、その後DOMをハイドレートするのにかなりの時間がかかることがあります。この遅延はインタラクティブまでの時間(TTI)に影響を与え、ユーザーは視覚的には完全だが応答しないページに置かれたままになります。
原因:
- 大きなJavaScriptバンドル: JavaScriptが多いほど、ダウンロード、解析、実行時間が長くなります。
- 複雑なコンポーネントツリー: 深くネストされた、または非常に広いコンポーネントツリーをハイドレートするには、より多くのCPU時間が必要です。
- 過剰なクライアントサイド状態管理: 初期ハイドレーション中の複雑すぎる状態ロジックまたは重いデータ処理。
解決策:
- コード分割/遅延ロード: 現在のビューに必要なJavaScriptのみをロードします。Next.jsとNuxt.jsはページについてはこれを本質的にサポートしており、動的インポートを使用してコンポーネントにも適用できます。
// Next.jsコンポーネント遅延ロード(SSR: false、ただしSSRを望む場合はそれなしでも同上) import dynamic from 'next/dynamic'; const MyHeavyComponent = dynamic(() => import('../components/HeavyComponent')); // コード分割されます function Page() { return ( <div> <MyHeavyComponent /> </div> ); } - JavaScriptペイロードの削減: ツリーシェイキング、ミニファイ、未使用の依存関係の削除などの技術を使用して、バンドルサイズを最適化します。
- イベントリスナーのスロットリング/デバウンス: 特定の要素が重いイベントリスナーを必要とする場合、そのアタッチを最適化することを検討してください。
- サーバーコンポーネント機能(Next.js): Next.js 13+はReactサーバーコンポーネントを導入しました。これにより、コンポーネントがサーバーで完全にレンダリングされ、クライアントにシリアル化可能なデータのみを送信できるようになり、UIの一部に対するクライアントサイドハイドレーションを実質的に「スキップ」することで、クライアントサイドJavaScriptが大幅に削減されます。
- 最適化された画像: 画像が最適化され、遅延ロードされることを確認し、ハイドレーション中にメインスレッドをブロックしないようにします。
3. フラッシュとレイアウトシフト(CLS)
サーバーレンダリングされたHTMLが表示された後、クライアントサイドアプリケーションが引き継ぐ際に、時折目に見えるちらつきや突然のレイアウトシフトが発生することがあります。これは、ハイドレーションミスマッチ、またはより一般的には、サーバーとクライアント間でのCSSの適用方法やコンポーネントのレンダリング方法の違いの兆候であることがよくあります。
原因:
- CSS-in-JSライブラリ: 一部のCSS-in-JSライブラリ(例:styled-components、Emotion)は、サーバーとクライアントで異なるクラス名を生成したり、ハイドレーション前にスタイルが完全に注入されなかったりする場合があります。
- フォント: カスタムフォントが初期レンダリング後にロードされると、テキストが再フローする可能性があります。
- 画面サイズに基づく条件付きレンダリング: コンポーネントがサーバーで一度レンダリングされ(デフォルトのビューポートを想定)、その後クライアントサイドJavaScriptが実際の画面サイズに合わせて調整する場合。
解決策:
- 適切なCSS-in-JS設定: CSS-in-JSライブラリがSSR用に正しく設定され、スタイルをサーバーで抽出および注入して、一貫したクラス名とスタイルの適用を保証するようにします。Next.jsとNuxt.jsには、これのための専用プラグインまたはガイドが用意されていることがよくあります。
- 重要なフォントのプリロード: `<link rel=

